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臨床動作法

心理 河合 美貴

“臨床動作法”もしくは“動作療法”という言葉を聞いたことがありますか?臨床動作法とは成瀬悟策によって考案された“動作”に焦点をあてた心理療法です。広辞苑には“動作”を『事を行おうとして身体を動かすこと。また、その動き。立ち居振る舞い。挙動』とありますが、臨床動作法における“動作”はもう少し意味が広く、目に見えるからだの動きだけではなく、体を動かそうとする努力も含みます。例えば手を動かす時、意識はしていなくても手を動かそうと『考え』、からだに力を入れようと『努力』をし、実際に手が『動く』のです。すなわち意図―努力―身体動作で表される一連のことが“動作”なのです。そして、その“動作”によって“こころの働き”を改善しようとするのが臨床動作法なのです。

臨床動作法が誕生する契機になったのはある催眠での現象です。手の動かない脳性マヒ児に催眠下で暗示をかけるとそれまで動かなかった手が動いたという報告がありました。「からだが動かないのは、動かし方が悪い、動かし方がわからないため」と考えられ、動作訓練が試みられました。ところが実際に訓練をしてみると、“動作”の改善だけでなく“こころの働き”も改善することがわかり、“臨床動作法”という考え方が生まれました。

こころとからだは密接な関係があり、その時々の気持ちが動作にも表れます。「さあ、仕事をするぞ!」という時は自然とからだに力が入り「落ち込んでいる」時は力が入らないといったように、私達は意識をしていなくても状況に応じて力の入れ方が変わっています。適度に力を入れたり抜いたりできればよいのですが、時には不必要な力を入れてしまうこともあります。この状態が続くと緊張が蓄積され、四十肩のような慢性的な疲労が生じてしまいます。臨床動作法では、セラピストが緊張を弛め、痛みをとるため肩の挙げ降ろしなどの課題を設定し、クライエントはその課題に向けて努力します。クライエントはセラピストとの関係の中で、自分がどのように緊張しているのかに気付いていきます。そしてそれに伴い、さらにリラクゼーションが進行していきます。マッサージ・鍼など受動的に緊張を弛める方法も効果はありますが、その場限りのもので時間が経てば緊張状態が戻ってきます。臨床動作法を通して自分自身で“緊張を弛める努力”が身に付いてくると、それ以前に過度な緊張状態を作りにくくなり、緊張しすぎても自分で対処ができるようになります。これまで悩まされていた肩凝りから解放され気持ちが楽になるだけでなく、他者の援助を活用し他者の援助で楽になるといった体験を通して、他者との関わり方が変わっていく、肩の凝らない関わり方ができるようになっていくといった心理的な変化が生まれてきます。

現在、臨床動作法は大人から子どもまで幅広く適用されており、肩凝りや腰痛などの改善、姿勢の矯正、高齢者の健康維持増進をはかる健康法として用いられています。

<参考文献・参考URL>

成瀬悟策 (1998) 姿勢の不思議 しなやかな体と心が健康をつくる 講談社.
成瀬悟策 (2000) 動作療法 誠信書房.
成瀬悟策 (2001) リラクセーション 緊張を自分で弛める法 講談社.
日本臨床動作学会 (2000) 臨床動作の基礎と展開 コレール社.
鶴 光代 (2002) 連続講座 臨床動作法への招待 臨床心理学 金剛出版.

臨床動作法 心理リハビリテーションホームページ
http://www.edu.kyushu-u.ac.jp/html/KANREN/dohsahou/

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