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<認知症の基礎知識> その3:診断と治療

医師 岩井 雅之

10. お医者さんにかかるとき

『認知症』は記憶障害をはじめ、多彩な症状をしめしますので、診断は難しい場合もあります。そこで、ご本人やご家族から詳しく問診したり、さまざまなテストや検査を行って診断することが多いです。

診断のながれ

[1]本当に「認知症」かどうか調べる

  • 患者さんからの情報は「認知症」を診断するときの重要な目安になります。
  • 記憶障害や認知機能の低下を調べる検査をすることもあります。

[2]原因となる病気は何か調べる

  • 他の病気の有無をみるために:一般内科的診察/神経学的検査など
  • 全身の状態をみるために:血液・尿検査など
  • 脳内の変化をみるために:CT/MRI検査など

問診に答える心構え

患者さんからの情報は「認知症」を診断するときの重要な目安になります。そこで、患者さんだけでなく、ご家族にも症状やその症状に気づいた時期などを詳しく聞かれます。また、これらの情報は診断に役立つだけでなく、介護の上でも大変参考になります。突然聞かれると答えられないこともありますから、事前に整理しておくことをおすすめします。

<よく質問されること>

  • いつごろから、どのようにして症状が出てきたのか?
  • 現在はどのような症状があって、どのような症状で困っているのか?
  • 今までにかかったことのある病気は?
  • 現在、治療を受けている病気はあるか?
  • どんな薬を飲んでいるか?(わからない場合は、薬の包装ごと持っていく)
  • 今一番大変なことは何ですか?

<ご家族の方へ>

認知症の患者さんは、ご家族以外の方にはよそ行きの顔を見せることが多いようです。患者さんが信頼しているご家族でしかわからない症状も多いと思われますので、先生には日頃の様子をしっかりとお伝えください。

11. 認知症の診療

身体的疾患などによって、一時的に認知症の症状を示した場合は原因となった病気の治療が優先されます。では、現段階では"治らない"といわれる認知症では、どのような診療をするのでしょうか?認知症では、記憶やさまざまな行動が障害されます。残念ながら現段階では失われた機能を元に戻すことはできません。そこで、診療は残っている身体的、精神的な機能をなるべく長く維持するといったことが目的となります。

12. 認知症の薬物治療

「認知症」の症状は大きく2つにわけられます。記憶障害や判断力の障害など中心となる症状と、それに伴っておこる周辺の症状です。

認知症の中心となる症状を根本的に治療する薬は今のところありません。しかし、最近アルツハイマー病の症状の進行を遅らせる薬(商品名:アリセプト)が出てきています。この薬は病気を治す薬ではありませんが、認知症の症状の進行を遅らせることによって、ご家族と一緒に過ごす貴重な時間を長くすることが出来るのです。

また、ご家族の方を悩ませているのは、おもに周辺の症状だと思います。しかし、これらのうち幻覚や不安などの精神症状、徘徊などの問題行動も向精神薬などの薬によって症状が改善する、あるいは軽くすることができます。

次回で最終回です。認知症のケアと介護についてのお話です。

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