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<認知症の基礎知識> その1:認知症とは

医師 岩井 雅之

もの忘れ?認知症?

年をとるにしたがって、「もの忘れがひどくなった」と感じる人は多いのでは?

この「もの忘れ」、ただのもの忘れで片付けていませんか?ここでは、知っているようで実は正しく理解されていない「認知症」について、わかりやすくまとめてみました。

1.認知症は身近な問題

平成14年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は、男性78.32歳、女性は85.23歳。日本は本格的な高齢社会に突入しているのです。認知症の高齢者も年々増加し、2005年は、約189万人、20年後には約292万人に達すると予測されています。そして85歳以上のお年寄りの4人に1人が認知症といわれています。

2.認知症の定義

「久しぶりに会った人のことが思い出せない」このような経験はだれにでもあります。「もの忘れ」は自然な老化によっておこる「単なる歳のせい」で、誰にでも起こりえます。一方、「認知症」は「病気」であり、単なるもの忘れではありません。

そこで『認知症』とは

   脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力などの障害がおこり

   普通の社会生活がおくれなくなった状態

と定義されています。

ここでは、様々な症状によって毎日の生活が困難となった状態という点が大事です。

3.もの忘れとの違い

年齢を重ねるうちに「もの忘れが増えてきたな」と思う方は多いのではないでしょうか。これは脳の神経細胞の減少という免れることのできない老化現象の影響で、誰にでもおこる「もの忘れ」です。このような、通常の老化による現象より早く神経細胞が消失してしまう脳の病気、これが『認知症』です。

認知症は、はじめのうちは歳のせいによるもの忘れとの区別がつきにくい病気です。大きな違いの一つとして、認知症は記憶のすべてを忘れてしまうのに対し、歳のせいによる物忘れは記憶の一部を忘れているという点があげられます。

4.認知症とは

認知症は、脳が病的に障害されておこります。その原因となる病気は、頭蓋内の病気によるもの、身体の病気によるものなどたくさんあります。多くは「アルツハイマー病」と「脳血管障害による認知症」です。なかには、原因となる病気を適切に治療することで認知症症状が軽くなるものもあり、それらは認知症全体の約1割を占めているといわれています。日本では、脳血管障害による認知症の方がアルツハイマー病よりも多いといわれていましたが最近ではその割合が逆転し、アルツハイマー病の方が多いとの報告があります。

5.アルツハイマー病とは

アルツハイマー病とは、原因は不明ですが、脳内でさまざまな変化がおこり、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が病的に萎縮して(小さくなって)高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症です。ゆっくりと発症し、徐々に悪化していきますが、初期の段階では運動麻痺や感覚障害などはおきません。また、本人は病気だという自覚がないのが特徴です。症状としては、まず「もの忘れ」があげられます。最初は、古い記憶は比較的保たれていますが、新しい出来事が覚えにくく、忘れやすいという特徴があります。病気が進むともの忘れのために生活に支障をきたすようにさえなります。また、「判断力の低下」もみられ、さらに時間、場所、人物の判断がつかなくなります。

6.脳血管障害による認知症とは

脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなり、そのため認知症になることがあります。このような認知症を脳血管障害による認知症といいます。症状は、もの忘れ、頭痛、めまい、耳鳴り、しびれ等がみられることがあり、脳卒中の発作がおこるたびに段階的に悪化することが多い様です。脳血管障害による認知症は、障害された場所によって、ある能力は低下しているが別の能力は比較的大丈夫という様に、まだら状に低下し、記憶障害がひどくても人格や判断力は保たれている事が多いのが特徴です。

次回は、認知症の症状を中心にしたお話です。

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